書籍「太平洋戦争と新聞」の感想

毎年この時期は、太平洋戦争について考える本を読んでいる。
今年選んだのはジャーナリストの前坂俊之著の「太平洋戦争と新聞」。満州事変から終戦までの15年間の新聞報道について詳しくかつ具体的に検証した書籍で、既知の事柄もあったが、かなり勉強になった。
昭和初期に国民に最も影響を与えたのは新聞で、本書では主に東京日日新聞(今の毎日新聞)と朝日新聞の二大紙の社説や見出しが取り上げられ、他に読売新聞や先日Nスペで取り上げられた日本新聞についても触れられている。それらの見出しを見ているだけで、日本の新聞が国民に何を報じてきたかが良く分かった。

満州事変の前までは日本の新聞は軍による中国での活動拡大については反対だったし、政府による軍縮も国民の支持を受けていた。しかし、軍拡派が統帥権を振り回すようになったり、満州事変の現地報道によって新聞が売れまくったり、反戦的な報道に対する在郷軍人会(300万人規模)による不買運動が起きたり・・・などなど様々な要因が重なっているうちに、新聞は軍部に妥協するようになってしまう。そして5.15事件で政党政治が崩壊した時点では、ほとんど骨抜きとなってしまい、軍に迎合する記事が目立つようになり、2.26から盧溝橋の頃には完全に軍を支持し、国民を鼓舞する報道ばかり。検閲によって南京虐殺が日本人には全く報じられてなかったことは知っていたけど、その実態についても本書で知り得た。
新聞が軍部を批判しなくなる過程において、天皇機関説に対する猛反発や、相次ぐ政府要人の暗殺なども絡んでいて、これらと新聞メディアの関係が本書によってとても良く理解出来た。太平洋戦争の前になると軍事独裁政権による検閲が猛烈に厳しくなったので、新聞はほとんど政府広報誌とならざるを得なかったことは理解出来るが、それは結果的に国民に嘘を報じ続けたことになった・・・
一方、雑誌メディアの一部が頑張って批判を続けていた(発禁になりながらも)ことには少しホッとする気持ちも抱いた。

日本の国家の"重要事態"に政府,軍部を批判するとは何事か!日本は万世一系の天皇陛下を抱く世界に類を見ない優秀な民族だ!天皇陛下の皇軍を貶めることは不敬だ! 軍部に都合が悪い報道をした際に巻き起こった反論は、こんな感じのものばかり。
しかし、これは今でもあるように思うのは私だけじゃないだろう。


戦争とは関係ないけど、来年の東京オリンピックは日本の"重要事態"なので批判は糾弾されるだろうし、不都合な真実は報じられないに違いない。


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